2010年08月07日
米軍普天間飛行場移設 ~日米合意の見直しを求める~
~日米合意の見直しを求める~
会派「阿呍」代表 久場 良宣
地域主権 それは 平等?
「強い経済、強い財政、強い社会保障」、菅新総理は強い口調で政策のキーワードを宣言(6月11日の所信表明)された。言外には、「強い日米同盟!強い地域主権!但し、1つの県を除く」と述べておられたかのように聞こえた。それは単なる被害妄想からなのか、どうか?米軍普天間飛行場の移設問題について、一般質問の前に所見を述べたいと思う。
菅総理は就任早々、鳩山前政権による日米合意(米軍普天間飛行場の移設先を名護市キャンプ・シュワブ辺野古崎地区とこれに隣接する水域とし、1,800メートルの滑走路を建設する。平成22年5月28日発表)を継承すると表明し、間髪を容れずオバマ大統領にも同合意の履行を約束されたのである。
半世紀どころか65年もの長い間、米軍基地の被害に遭っている地元沖縄県の頭越しに、日米両政府が県内移設を合意したのである。しかも、防衛や外交上も5月末までに決着しなければならない説明をしないままに――。
昨年8月の政権交代以降、この件に関して何ら関与されなかった菅総理(政権党代表)は、就任直後先ず前政権が米国と合意に至った過程や正当性を検証すべきだったのではなかろうか。
では、日米合意に至るまでの過程を振り返ってみよう。次のような発言や事柄が鮮明に思い出される。
・名護市長選挙の結果を、「斟酌しなければならないという理由はない」。
・議会の、「議決を超えてやっていかないといけない場合もある」。
・持論を補足して、「本土に受入れる素地がない」。
・国会答弁で、「私の県が受けますからおいでくださいというところは皆無でございます」。
・ゲーツ米国防長官が地元自治体や連立政権内での合意が得られるかの疑問に応えて、「日本の政治状況まで指摘してもらわなくても政 府の中できちんとやる」。
・女性議員の勉強会で、「普天間は直接国民の生活には影響しない」。子ども手当てについて、「大きな評価を得ているが、何か普天間でかき消されているかのような状態で残念だ。地方に行くと、普天間は雲の上のお話・・・」。
・その他、感謝の振興策論、感謝をも含む哀悼の辞など。
特筆しておきたいのは、沖縄の基地過重負担の根源である思いやり予算を二度も回避した事業仕分けである。
閣僚や政党幹部等による沖縄県民の世論や民意(米軍普天間飛行場の撤去や国外・県外移設)を無視し、逆に他の都道府県の意志(米軍基地や機能の受入れ拒否)を尊重して、「だから沖縄にご負担を・・・」という基地を押し付けるような発言と行政運営を繰り返した。
地域主権改革は、重要政策の「1丁目1番地」と位置づけたのは一体、何処の誰だったのか?沖縄県は0丁目0番地なのか?と問いたい。ウチナーンチュの主権を否定しての日米合意―― これも「最低でも県外移設」と同様、明らかに政権公約(選挙口約)違反である。
菅氏が鳩山政権の副総理大臣だった昨年、喜納昌吉参議員との面談で、「沖縄の問題はどうにもならない。もうタッチしたくない」とか、「もう沖縄は独立したほうがいいよ」などと発言したとのことである。もし「沖縄は、かつて琉球処分によって日本に併合した島だ」という植民地支配の潜在的意識による発言であったのであれば、日米合意の見直しは無理な相談かも知れない。
抑止力 なぜ 辺野古?
鳩山前総理は県内移設の理由として、「北東アジアの情勢を考えると、抑止力の観点から国外は難しい。普天間を沖縄以外に移すと海兵隊の地上部隊と連携が取れなくなる」とか、「海兵隊の存在は、必ずしも抑止力として沖縄に存在する理由にはならないと思っていたが、学べば学ぶにつけ、米軍全体の中での抑止力に思い至った」と説明された。しかし、抑止力の観点から普天間を辺野古に移設しなければならない根拠はお示しにならなかったのである。
抑止力の観点から、普天間を辺野古に移設することの矛盾について私見を述べたいと思う。
インド独立の父、マハトマ・ガンディーがイギリス植民地政府による塩の専売に反対して行った「塩の行進」を思い出す。
ガンディーが目指した独立運動の精神は非暴力不服従の実践であった。彼の独立への行動提起に応じた都市や農村の民衆は「撃たれても叩かれても逮捕されても手をふるうことなく、堂々と顔を上げて前進しようとした」とのことである。
国の指導者も一般庶民も彼らのような覚悟がなければ軍事力による抑止力を認めざるを得ないでしょう。
辺野古に建設予定の新基地が機能する頃には、南北朝鮮も政権が交代し、友愛政治が行なわれているのかも知れない。が、歴史的事例を参考にしたい。
・高麗王国による二度の日本侵略(1274年10月、1279年)
・逆に、太閤秀吉による二度の朝鮮出兵(1592年3月、1597年9月)
・「天気晴朗ナレ共浪高シ」の暗号で日本帝国海軍が、ロシアのバルチック艦隊を迎撃(1905年5月)
・北朝鮮による二度の弾道ミサイル発射(2007年7月に7発、2009年5月に3発)
何れも辺野古より遥かに遠い日本海での紛争であり、出来事であった。抑止力の観点からすると辺野古よりも日本海沿岸の何処かを埋め立てて、基地を建設した方がより効果的ではなかろうか。
北東アジアに限定せず、ついでに太平洋側ではどのような事例があったか。現在、辺野古に基地を要求している米国との大戦を振り返ってみたい。
・「トラ!トラ!トラ!」で始まった日本帝国海軍による米軍港真珠湾攻撃(1941年12月8日)
・逆に、米空軍による帝都空襲(1942年4月18日)
――以来、民間地への無差別攻撃が106回に及んだとのこと――沖縄大空襲(1944年10月10日)に先立つこと約2ヶ月半前の事であった。
・東京大空襲(1945年3月10日)
――僅か2時間半で88,000余名の死傷者を出したとのこと――米軍沖縄本島上陸(1945年4月1日)に先立つこと約3週間前の事であった。
この大空襲で大本営は混乱に陥り、沖縄上陸、広島・長崎への原爆投下、無条件降伏への道のりを歩む因となったのではないか。米軍による大都市攻撃は軍事施設の有無にかかわらず「焼夷弾で先ず軍事工場に働く労働者の住宅を叩いた方が効果的だ」という作戦であったとのことである。依って、抑止力の観点からすると、基地は辺野古よりも東京都を中心とする大都市圏各地に移設してこそ、より効果的ではなかろうか。
去った6月1日の新聞報道によると、「中国人民解放軍が将来の宇宙軍拡競争に備え、空軍と宇宙開発を統合した『空天一体』戦略を策定し、『宇宙軍創設』へ向け準備を本格化させていることが分かった。また、構想では10年から30年にかけ、第4世代戦闘機や衛星、ミサイル攻撃兵器を開発し、衛星情報システムを完備させ、『周辺地域の制空権での優位』を目指す」とある。
1991年の湾岸戦争の映像による報道は、ハイテク兵器の破壊力や精密な攻撃力を見せつけた。トマホークやパトリオットといった新型兵器は今も印象に残っている。中国の戦略は更にレベルアップを計り、宇宙からレーザーや電波などで敵を攻撃するとしている。
これまた抑止力の観点からすると辺野古より、種子島宇宙センターや父島のロケット追跡施設の機能充実強化と宇宙基地建設の方がより効果的ではなかろうか。
上記の新聞報道(北京共同)はタイミング的に、先の日米合意による辺野古崎を埋め立てての新基地建設は、「B29爆撃機に対して高射砲で、戦車に対して竹槍で迎え撃つような半世紀以前の戦略思考の延長だ」とさげすまれているような気がした。
遠い過去の出来事や未来の構想を論じても現実的ではないとお叱りを受けそうである。
では、最新情報を掲載する。今日の新聞記事(ワシントン共同)によると「中国政府が今年3月、北東アジアとインド洋を結ぶ軍事・通商上の要衝で、アジア各国による係争地を抱える南シナ海について、中国の領土保全などに関わる『核心的利益』に属するとの新方針を米政府高官が正式に表明したことが分かった」。「中国は南シナ海でも日中双方が領有権を主張する尖閣諸島(中国名・釣魚島)海域周辺での活動を活発化させており、海洋権益をめぐり日本との摩擦が激化する恐れもある」とのことである。
これもまたまた抑止力の観点からすると沖縄本島の北に位置する辺野古よりも、南の尖閣諸島や東の沖ノ鳥島に堂々と基地を建設してこそ、敵に攻撃をためらわせる抑止力の効果が確実であると言えよう。
目には目、歯には歯の思考で縷々申し述べたが、「外交力に勝る抑止力はない」と思う。否、断言したい。「外交の背景に軍事力がなければ抑止力にはならない」というような意見も一理ある。完全に否定するつもりはない。しかし、去った大戦の直後までの国際連合加盟国はたったの51箇国であったのが、現在は192箇国に急増した。当時、独立国は何箇国で戦後何箇国独立したかの詳細資料は持ち合わせていないが、数多くの国が独立したのは間違いない事実である。独立を勝ち取った諸国は、1国たりとも植民地支配の列強国より軍事力が優位であった国はない。
外交きちっと交渉した?
国土の面積の0.6%しかない沖縄に、米軍専用施設の74%が集中している。では、沖縄県内の米軍基地全体に対する普天間基地の割合はどうなっているのか県基地対策課の統計資料(2010年3月末現在)を調べてみた。
施設数※1は合計34箇所の内、海兵隊施設は15箇所あり、普天間米軍施設は県内米軍施設全体の34分の1に過ぎないのである。また、施設面積※2は合計23,293.3haに対し普天間飛行場の面積は480.6haである。つまり、普天間飛行場の面積は率にすると県内米軍施設の僅か2%に過ぎないのである。残念ながら軍人軍属の施設別実数は把握することが出来なかった。参考のために、県内駐留軍従業員数は9,014人、内普天間飛行場従業員数は200人で率にすると2%である。
しかも、普天間は世界で一番危険な飛行場であり、国際的にも批判の的になりかねないと米国は認識していて、早期に移設または撤去したいのが本音のようである。政府はこのような危険極まりない施設を米国に対し、「国内に移設先は見つかりません。どうぞお持ち帰りください」と交渉することは出来なかったのか。
出来なかったからこそ合意してしまった訳であるが普天間飛行場の危険性を除去するため、どのような交渉をしたのか如何なるマスメディアからも伝わってこなかった。ただ、交渉の舞台裏で、「抑止力に対する海兵隊の役割」、「基地の適正規模は如何ほどか」、「安保条約の本旨と世界の現況」などについて、色々と難しい交渉を丁々発止と渡り合った結果やむを得ず合意したのではないかとの思いもあった。
ところが、去った6月28日の新聞を読んでがっかりした。マイク望月氏(ジョージ・ワシントン大教授、東アジア国際関係専門家)が与那嶺路代ワシントン特派員のインタビューに、「日本の閣僚は米国の意見を日本政府に持ち帰ってくるだけで、鳩山氏を後押ししなかった。彼らはワシントンに来て米国が何を考えているかを聞き、鳩山氏に米国が反対していると伝えただけで、議論にはならなかった」と答えている。日本の外交官は優秀であるとの定評があるのに、こと普天間問題に関しては、単なるメッセンジャーボーイ役でしかなかったとは誠意がなさ過ぎる。米軍基地の負担軽減を願う県民軽視も甚だしいと言わざるを得ない。
更に本日の新聞は、「ゲーツ米国防長官が在沖米海兵隊のグアム移転をめぐり、日本側に経費負担の増額を要求する書簡を送って来た。これに対して、日本側は慎重な構えで、参院選後に回答する方針だ」と伝えている。この調子だと財政難の米側は、これからも色々と理屈を並べて更に増額を要求しかねない。基地のグアム移転に伴う経費103億ドルは、すでに日本側6、米側4の比の不利な条件で合意されているのだから、「日本は現在1,000兆円超の借金を抱えているのでこれ以上の負担は致しかねます。自国が統治している領土は、どうぞ自国民の税金でインフラ整備をして下さい」と即答するべきではなかったか。米日主従関係か?独立国家の気概を疑う。菅総理が所信表明に、「強い外交」を表明しなかったのは訳ありだったのかといちゃもんをつけたくなる。
政治信条ぜひ原点回帰を!!
県民・国民は、「日米安全保障条約によって、米国が日本を守ってくれるから基地を提供するのは当然である」と思い込まされている。果たして、米国は本当に守ってくれるのか?守ってくれるのなら、日本は国益を損ねている北方領土、竹島、尖閣諸島の領有権問題解決のため早期に行動を起こすべきであろう。
領土問題で紛争が勃発した場合、果たして米国が軍事介入するのか。しないのであれば、日米安保条約は如何なる場合に於いても日本を守る確約がないからではないか。戦後このかた65年も永きに亘り領土問題が未確定のまま今日に至っているのはその証である。軍事力による領土解決を望んでいる訳ではない。日米安保条約の本旨に疑問を呈したいのである。
普天間飛行場は、国内における米軍施設全体の僅か0.01%に過ぎないのである。普天間基地の撤去や国外・県外移設は、抑止力上日本の安全を脅かしたり、日米安保条上日米同盟関係を悪化させたりする要因にはならないはずである。
菅総理も、かつて野党時代の党代表だったころ、「海兵隊を米領に戻しても日米安保上支障はない。どうしても必要であれば削減して本土へ移転するのも当然だ」と安保条約上支障はないことと、海兵隊の県外・国外移転の意思を県民にはっきりと示された。また、「対米追随ではない自主的外交」をも国民に力説された。その政治信条が国民・県民に支持されての政権交代ではなかったのか。オバマ米大統領は、「核なき世界」の実現を提唱してノーベル平和賞を受賞された。両首脳とも、それぞれの政治信条の原点に回帰されて、「日米合意」を見直すよう切望する。
かつて沖縄の住民は、基地建設のため銃剣とブルドーザーで強制的に土地を接収された。そして65年経った今、再び新たな基地を押し付けられようとしている。しかも、国民の税金で基地を建設し、米軍に提供するというのでる。このような手法による基地建設を容認すれば、永久に米軍基地は存続しかねない。県民は抽象的な公約や理論のすり替え等に惑わされることなく、強い意志を持って子や孫に誇れる行動をせねばなるまい。
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※1施設数=海兵隊15、空軍6、海軍5、陸軍4、共用3、その他1〔合計34箇所〕
※2施設面積=北部訓練場7824.2ha、奥間レスト・センター54.6ha、伊江島補助飛行場801.6ha、八重岳通信所3.7ha、慶佐次通信所1.0ha、キャンプ・シュワブ2,062.6ha、辺野古弾薬庫121.4ha、キャンプ・ハンセン5,120.7ha、ギンバル訓練場60.1ha、金武レッド・ビーチ訓練場1.7ha、金武ブルー・ビーチ訓練場38.1ha、嘉手納弾薬庫地区2,657.9ha、天願橋3.1ha、キャンプ・コートニー133.9ha、キャンプ・マクトリアス37.9haキャンプ・シールズ70.0ha、トリイ通信施設193.4ha、嘉手納飛行場1985.5ha、キャンプ桑江67.5ha、キャンプ瑞慶覧642.5ha、泡瀬通信施設55.2ha、ホワイト・ビーチ地区156.8ha、普天間飛行場480.6ha、牧港補給地区273.7ha、那覇港湾施設55.9ha、陸軍貯油施設127.7ha、鳥島射的爆撃場4.1ha、出砂鳥射爆撃場24.5ha、久米島射爆撃場0.2ha、浮原島訓練場25.4ha、津堅島訓練場1.6ha、黄尾嶼謝爆撃場87.4ha、赤尾嶼謝爆撃場4.1ha、沖大東島謝爆撃場114.7ha、〔合計23,293.3ha〕
参考文献:沖縄タイムス、琉球新報、沖縄の米軍及び自衛隊基地統計資料集、インド民族運動史
ということは、私達沖縄県民は「沖縄にある基地全て、もしくは半分を県外・国外へ」といっているわけではなく「0.02%のこの世界一危険な基地を沖縄からどうかなくしてくれ」と願っているわけであって、そう考えるとそんなに無理なことを言っているとは思えない。
(もちろん本当の気持ちは全ての基地を持ち帰ってくれと言いたいのだが。)
県内に数多くある基地の中の普天間基地を県外や国外へもっていってくれというだけで「日米同盟の危機」と騒ぎ立てるメディア・・・多くの国民(特に本土の人)が沖縄の米軍基地のほとんど全てを県外・国外へ移設するのかと勘違いをしてもおかしくない。
とにかく一刻も早く、この“危険で迷惑”な普天間基地をなくしてほしい。
今日で沖縄国際大学へのヘリ墜落から6年。
未だに私達の上空を飛び回る危険なヘリコプター。
その危険を分かりながらも沖縄に押し付け放置している日米両政府。
沖縄県民の命を軽視しているの?黙って我慢しろというの?
いい加減にしてくれ。
(ヘリ墜落当時の沖国大学生より)
